死にたい夜に見る君が愛しいって話
就職して早1ヶ月。もう2ヵ月と言ってもいい時期。
新社会人の私は例に漏れず色々な意味で意気消沈する日々が続いていた。
専門学校卒の所謂専門職で、人様の命を預かる仕事に対して自分の不甲斐なさに打ちひしがれて項垂れる昼休み。
要領が悪くて仕事を慌てて片付けるから振り返るたびに至らなさに溜息が出る夕方の帰り道。
明日の朝が来るのが憂鬱で、明日また自分が先輩の足を引っ張るんだろうなと思うと眠るのもまたなんとなく気が進まない24時。
また1日不甲斐ない自分に疲れ果てるのを思うと足が重い朝の駅への道。
私は今日も1Kの自室のベッドに早々潜り込んで、画面の中で笑っている彼を見ている。
彼、私の愛する唯1人のスーパーアイドル。
今日も変わらず朝も昼も夜も彼、丸山隆平くんの笑顔はよく晴れた日の朝の様に眩しくて爽やかでほんの少しの希望と強ばった身体をほっと和らげる穏やかさがある。
いつ見ても彼は可愛くて親しみやすい朗らかな笑顔が印象的で、不意に伏せた瞳の翳りや夜の海みたいに静かで底知れない鋭い眼差しを見つける度に胸は高鳴る。
単調で上手くいかない日々の彩りに、彼はあまりに鮮やかだ。
昼休みに開いたスマートフォンで彼からの言葉を受け取る度に肩の力が抜けた。
帰り道にイヤホンから流れる彼らの歌声に沈む思考がゆっくり引き上げられた。
死にたくなるような夜中に流したDVDで笑う彼は真夜中の暗い部屋に光を満たす、私の狭い世界の太陽だった。
朝の重い足取りの合間に丸山隆平くんの笑顔を思い出すと朝のほんのり冷たい風にもしゃんと背筋を伸ばせた。
彼が、丸山隆平くんが、アイドルで良かった。
広い世界のどこに居たって、何をしていたって、丸山隆平くんはきっと眩しくて愛しくて底知れないミステリアスで愛される人だっただろうな。
私が知らない世界の先でも、彼の笑顔はきっと澄み渡る青空のように小さな幸福の予感をくれるだろうな。
でも、丸山隆平くんはアイドルだ。
広い世界のなか、この日本でアイドルをしてくれる。
テレビで、雑誌で、スクリーンで、スマホで、彼は惜しみないその愛と希望を与える鮮やかな笑顔を与えてくれる。
途方も無い広い世界で、目まぐるしく過ぎる時間の中で、私はアイドルじゃない彼を見つけられただろうか?
私は彼が眩しくて熱くて足が竦むほど高いステージに立つことを選ばなかったら、この日々の彩りを得られなかったと思うとアイドルとしての彼が愛しくて愛しくてたまらない。
丸山隆平くんは太陽だ。
月だし星だし虹だし青空だし道端に咲く小さな花だし甘く蕩けるお菓子だ。
丸山隆平くんはなんにでもなれる。
私の世界の何者にもなれてしまう。
私は彼が居なかったらどんな昼休みを、帰り道を、夜中を、朝を過ごしただろう。
きっとそれなりに納得のいく日々ではあるかもしれない。
でもきっと今の鮮烈で胸に迫る感動も、希望も、知らなかっただろう。
肩身の狭い昼休みに見る丸山隆平くんはいつもの何倍も可愛かった。
疲れた帰り道に聞く丸山隆平くんの声はいつもの何倍も甘かった。
落ち込んだ夜中に見る丸山隆平くんはいつもの何倍も綺麗だった。
足取りの重い朝に聞く丸山隆平くんの声はいつもの何倍も何倍も輝いて、小さなやる気と希望をくれる。
なんでもない日々、嫌になる毎日、少し嬉しかった瞬間、私は丸山隆平くんが好きでよかったと思う。
今日も明日も私は丸山隆平くんの笑顔が好きでよかったと思うんだ。
ありふれた毎日の中に彼が居る幸せを私は最近よく感じる。
飽き飽きする毎日を、小さなエンターテインメントで彩る丸山隆平くんを私は私の1番のアイドルだと思う。
ああ、今日も丸山隆平くんを好きでよかった。
今夜も丸山隆平くんを見て眠る。
うんざりする朝を照らす彼の穏やかな笑顔を見るのを心待ちにして。
安易にこんなことを言うのは軽率すぎるかもしれないけれど死にたくなるような夜中に見る丸山隆平くんはいつもの何倍も愛しいんだ。
死ななくてよかった。こんな可愛い君を見れた。そうやって毎日思わせてくれるから。
憂鬱ばかりの毎日じゃない。
楽しい日もあるけど、誰もいない部屋の中で、いつも丸山隆平くんだけが穏やかに笑ってるから私は明日も頑張れる。
アイドルって素晴らしいな。
出逢えて良かった。
沢山いるアイドルグループの中で、私のナンバーワンアイドルグループは関ジャ二∞だ。
数え切れない人間の中で、1番の人は丸山隆平くんだ。
明日もまたきっと好きになって、明後日もまたその笑顔に魅せられる。
早く彼らに会いたいな。
彼らに胸を張って会える私でいたいな。
そうやって私は生きていくんだ。
憂鬱の夜には眩しい彼らに会える日を夢見て。
今年も愛しい夏がやって来る。
悲喜交々の初夏を超えて、夏より暑くて太陽より眩しい彼らがやって来る。
丸山隆平くんの愛する個性豊かな最高の仲間たちと、丸山隆平くんが抱き締めた沢山の大事なベース。
丸山隆平くんが、関ジャ二∞がどんな言葉をくれるだろう。
どんな顔を見せてくれるかな。
こっちも笑っちゃうような笑顔?
息が止まっちゃいそうなかっこいい顔かもしれない。
でもきっと胸が高鳴る最高の夏が来る。
彼らにも私の知らない憂鬱な夜もあったかな。
死にたくなるような夜中を乗り越えて、笑って会える日を生きる糧に私は明日も笑っているのかな。
ああ、本当にアイドルを好きでよかった。
関ジャ二∞を好きでよかった。
丸山隆平くんを好きでよかった。
希望の歌を歌う彼らに相応しい夏を私は草臥れながら、それでもそれなりに元気に待っている。